こんにちは。
時々、エンバーミングが出来るかどうか、エンバーミングをするとどこまでお身体の状態が回復・修復できるのか、故人様の状態を確認してほしい、という依頼が入ります。
もう少し具体的に言えば、浮腫みが強く、どこまで浮腫みが除去できるかどうか、損傷が激しいお顔を、どこまで修復できるかどうか、そもそもエンバーミングが出来る状態なのかどうかを教えてほしいということです。
こういった判断というのはエンバーマーにとって、とても難しいなと思っています。
エンバーマーが「ここまで」と申し出た状態が、ご家族にとっての「ここまで」と合致しない場合があるからです。
しかし、多くのご家族は「今の状態より少しでも良くなるなら」「何かしてあげられることがあるなら」とエンバーミングを依頼されることの方が多いような気がします。
ご家族が「今の状態より少しでも良くなるなら」「何かしてあげられることがあるなら」という気持ちを込めて、エンバーミングの依頼をくださる。
エンバーミングが「最後の砦」のように感じるときがあります。
この「最後の砦」が崩れてしまったとき、ご家族はどんな気持ちを抱えてしまうのだろうと思うとエンバーミングをするのが怖くなります。
ご依頼を受けた時は覚悟を決め、手を尽くしますが、ご家族の期待に応えられるかどうかという不安はあります。
私たちが、どれだけ「綺麗になった」「カッコよくなった」と思っても、
ご家族の中にある姿なのかは、故人様とご家族が対面されるまでは分かりません。
「いい顔してる」「穏やかな顔になった」と決めるのはエンバーマーではなく、ご家族です。
もしかしたら、ご家族の気持ちと合致しないかもしれないという思いが、
怖さを生み出しているのかもしれないですね。
エンバーマーが「怖い」という気持ちを持つというのは、もしかしたら意外だなと感じる方も多いのではないでしょうか。
しかし、「ご家族にとって」が心の片隅にあると、怖さを感じるというのは必然的なことかもしれませんね。
ご家族も、期待と不安を抱えながらエンバーミングを依頼してくださる。
怖いと感じても、ご家族の期待に応え、不安を取り除きたいという気持ちで故人様と、
故人様を待っているご家族と向き合っています。
だって「最後の砦」を壊したくないんですもの。
それではまた、お会いしましょう。