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エピソード7

更新日:2023年3月24日



こんにちは。


エンバーミングが終了し、故人様をご自宅へとお送りする時に、エンバーマーが同行する時があります。

故人様をご安置し、故人様とご家族が対面される時というのは、ご家族は故人様が帰ってきたと安堵し、エンバーマーは、ご家族がどのような反応をされるのか、緊張する時でもあります。


ご家族の反応は様々です。

「綺麗になったねー」「いい顔してる」「起きてきそう」、

近くで故人様のお顔をまじまじと見て、「エンバーミングってすごいねー」、

故人様の頬に手をあてて、言葉なく涙を流したり…。


「えっ、お父さんみたい!そっくり!」とおっしゃった方もいて、

「…ご本人ですよね?」と、少しドキドキしながら確認したこともありました。



ある日、いつものように故人様をご自宅へとお送りし、故人様とご家族が対面された時、

「えー、笑ってるー」と皆さんがケタケタと笑った時がありました。

「え、なんか笑ってるよね。えー」という、少し戸惑い交じりのような反応だったので、

「いつも、そんなに笑顔を見せない方だったんですか?」とお伺いすると、「なんかいつも眉間にしわを寄せてて」とか「いつも難しい顔してた」と、皆さんそれぞれにおっしゃっていました。


奥様が「やっと楽になれたって笑ってるんじゃない?いいじゃない」という言葉で、

その場は落ち着きましたが、故人様のいつもの雰囲気をなくしてしまったのかな…と、

心配になりました。


その後、私とご家族がお会いしたのは、お通夜の前のメイク直しです。

お化粧の感じ等をお伺いすると「うーん、綺麗だよねー」と言っていただき、お直しの必要はなさそうでした。


故人様をご自宅へお送りした時から、ずっと私が気になっていたことを伺えそうな雰囲気だったので、思い切って聞いてみようと思いましたが言葉が見つからず、

「その後、笑顔の〇〇様は見慣れましたか?」と単刀直入になってしまいました。


「うん-、いい顔。ごめんなさいね、あの時は笑っちゃったけど。」と娘さん。

「最期はずっと苦しそうな顔してて…その顔を見てたから…。こういう顔してたのよー。」と奥様。

やっとここで私の安堵がやってきました。



故人様のいつもの雰囲気を知っているのは、私たちエンバーマーではなく、いつも一緒に過ごしてこられたご家族です。

時々ですが、笑うことが少なかったから違和感を感じると言われるご家族もいらっしゃいますが、記憶から薄れていた故人様の姿を思い出していただけることもあるんだなと思った日なのでした。




それではまた、お会いしましょう。



過去のエピソードはこちら。

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