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納棺師から見たエンバーミング

更新日:2022年5月4日



 

みなさん初めまして! 去年11月よりジーエスアイスタッフとなりました元納棺師の大森です。 今回は沢山の葬儀のお手伝いをしてきた納棺師から見た、エンバーミングという選択肢についてのお話です。


私が今所属しているジーエスアイはグリーフサポートとエンバーミングの会社です。

納棺師もエンバーミングを行うエンバーマーも、ご遺体に着せ替えやお化粧をするという共通点があります。しかしエンバーマーはエンバーミングという防腐や保全のための薬液を亡くなった方のお体に浸透させる科学的な処置を行います。


エンバーミングをすることによってドライアイスなどを使用することなく、1週間~10日ほどはお体の状態を保つことが出来ます。

これが「すごいことだ!」と感じるのは沢山の葬儀を見てきた納棺師だからこそかもしれません。


その理由は納棺師として一番気を遣うのは亡くなった方のお体の変化だからです。

お体の状態は時間の経過と比例して腐敗による変化のリスクが高くなります。

大切な方を亡くしたという悲しい出来事に、お体やお顔が変わってしまったという別の悲しい出来事を重ねてしまうことだけは避けたいのです。


ですから、火葬までの日にちが長い場合、早い段階で納棺し、ドライアイスを多めに当てることや、お体の変化や匂いなどの観察を葬儀の担当者さんと連携を取りながらしっかりと行っていかなければなりません。 どうにかお体の状態は変わらなかったとしても、ドライアイスのせいで氷のように冷たくなったお体に触れることができなくなったり、変化を防ぐためのお化粧が濃くなってしまったりなどの別の問題も出てくることもあります。


そんな時、エンバーミングをしていたらもう少し近くで、ゆっくりとお別れの時間を作れたかもしれないと思うのです。


エンバーミングを行っていたなら、お体の状態を気にすることなくお家のお布団でゆっくりと休ませてあげることもできます。 そしてエンバーミングをした場合、ドライアイスを当てずに過ごせますので、お体やお顔がカチカチに冷たくなることもありません。ご遺族が自然に手やお顔に触れている場面を何度も見ました。


大切な人を失ったご遺族の多くから「もっと〇〇してあげればよかった」「なぜ、〇〇しなかったのだろう」という声を聞くことがあります。

私自身も仲の良かった父が亡くなったとき、後悔や罪悪感でいっぱいでした。

なぜ父にもっと会いに行かなかったのだろう。

もっと孫たちとの時間を作ってあげればよかった。

沢山の後悔の気持ちで葬儀の時間を過ごしていました。


コロナ禍の今、病院や介護施設にお見舞いさえ行けないまま大切な方を見送ったご遺族も、私と同じような後悔や罪悪感を持ちながら葬儀という時間を過ごしているかもしれません。

病院や施設から戻ってきたらやってあげたいこともたくさんあったかもしれません。

家でゆっくりさせてあげたかった。

もう一度、お風呂あがりのビールを飲んでいる姿を見たかった。

たとえ叶えることができなかったことであっても、葬儀の時にできることが何か必ずあります。返ってくる言葉はないかもしれませんが、亡くなった方に話しかけることや、お家でゆっくりと過ごす。葬儀でのこんな時間が以前よりも大切になっていると感じます。

葬儀という非日常の中では、感じられない安らぎの時間をエンバーミングで作ることができます。


納棺師として亡くなった方のお体の状態ができるだけ変わらないように苦労をしてきました。


だからこそエンバーミングが、いつか必ずくる大切な方とのお別れに必要な選択肢の一つになると思うのです。


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