亡くなった後の変化について
- 大森明子

- 2022年7月6日
- 読了時間: 3分
更新日:2022年7月7日
元納棺師の大森明子です。
私が始めて葬儀を経験したのは、37歳の時。父の葬儀でした。
身近な人の初めての葬儀で言われるままに、あっという間に過ぎた時間でした。当時、父の火葬までは5日ほどあり顔色が腐敗によって変わってしまうことを心配してくれた納棺師さんが、きれいなお化粧をしてくれました。
濃いお化粧だったので、父らしいお顔ではありませんでしたが、それでも変わってしまわないようにと納得して葬儀を終えました。
父が亡くなったことさえまだ受け入れられないのに、そのあと、父の顔が変わってしまったら、そんなこと絶対に耐えられません。火葬までの数日、棺の窓から父の顔をドキドキしながら覗いていたことを今も思い出します。
その後、私は納棺師という仕事に就きました。
毎日毎日、ご遺族と亡くなった方が安心して最後の時間を過ごしていただけるように、お体の処置をしていく中で、死後の変化を防ぐ方法が濃いお化粧だけではなく、いろんな選択があることもわかりました。
気温が高くなってくるこの時期は、亡くなった方の死後の変化がおこりやすい季節です。
亡くなった後の状態の変化は、早い時点でその兆候が見えることもあり、その際は変化を防ぐための対策が必要です。
しっかりとした対策をとればそれ以上、状態が悪くなる可能性をかなり低くできます。
ドライアイスを多めにする、リスクに合わせた場所をしっかりと冷やす、変化を見逃さないように、葬儀会社の方と連携をとって様子を見ていくなど、納棺師が行うのは外からの対策です。
しかしご遺体の状態変化は内側でどんどん進行しているわけですから、外からの対策には限界があります。特に体にガスが発生するときはお顔の印象がかなり変わってしまうので、ガスの兆候が見られた場合、とにかく冷やすしか方法はありません。お体の内部まで冷えるまでに変化が進行し体液の漏出やお顔が大きく膨れてしまうこともあります。
納棺師をしている時は、エンバーミングをしたら少なくとも体の変化だけに気を使いながら過ごすことはなかったのにと思うことが何度もありました。
エンバーミングは唯一お体の内側から処置を行うからです。
納棺師の仕事やお体の変化についてお話するセミナーなどを行っていると、あの時エンバーミングを知っていたら別の選択ができたかもとおっしゃる方がいらっしゃいます。
お母さまを亡くされたある方は、葬儀でのお母さまの最後のお顔が忘れられないとお話されていました。
写真を見せていただくと、ご生前の写真はどれも優しく微笑まれて、とても綺麗で品のあるお母さまでした。しかし最後のお葬儀の写真は、長い闘病生活でかなり痩せていたそうです。そして一番心を痛めていたのは、亡くなり自宅に帰ってきたお母さまの顔が、日にちと共に目が落ちくぼみ、お顔の色も変わってしまったことでした。
もし、エンバーミングしていたら死後の変化を防ぐことができ、もっと母らしいお顔でお別れができたかもとお話されていました。
もちろん、選択の一つなので、エンバーミングを行わない選択もあります。
火葬までの日にちが短い方や金額的にどうしても難しい方、理由は沢山あります。
しかし.「選択肢を知らなかったから、選べなかった」とご遺族が後悔するのは、とても残念なことです。
以前と比べて、現在はネットなどを調べるとたくさんの情報を手にすることができます。葬儀会社を選ぶための情報はもちろんですが、大切な方のお身体を守るため、より安心できるお別れができる情報を知ることも大切だと感じます。
葬儀で亡くなった方が変化をすることをご遺族は想像できません。
葬儀という時間が、死後の変化を心配することなくご遺族が心穏やかに過ごしていただけるようにどんな選択があるのかを、納棺師としてこれからもお伝えしていきたいと思います。


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