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#2どんなおじいちゃんを覚えておきたい?




和田の和は平和の和!世界平和系エンバーマー和田です😊

アッサラームアライクム!アラビア語のこんにちは、あなたの上に平和をという意味。

大学でアラビア語勉強してました。

世界情勢に心が穏やかでいられないこの頃、皆さまお障りなくお過ごしでしょうか。



前回までのお話はこちら → おじいちゃんのエンバーミングどうするよ?



さて、今回はエンバーミング依頼書についてお話ししようと思います。少し長くなりますが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

エンバーミングをご依頼いただく際に必ず必要になる書類がエンバーミング依頼書と死亡診断書/死体検案書のコピーです。 依頼書はご家族からエンバーマーへの手紙、ご家族・故人様とエンバーマーとのコミュニケーション手段だと私は思ってます。 残念ながら日本のエンバーミングではご家族とエンバーマーが直接コミュニケーションをとる機会が少ないというか、あまりありません(GSIはかなり多い方だと自負しております!)。 ご家族の希望に寄り添うために最も大切にしている資料、それがエンバーミング依頼書です。 ご家族には故人様の覚えておきたいお姿を思い浮かべながら書いていただきたいです。と思っています。


このエンバーミング依頼書、会社によって多少形式は異なりますが、だいたいこんな感じです。 エンバーミング依頼書のサンプル

(左側)

(右側)


左側はエンバーミングの目的、処置内容、留意事項や一般社団法人日本遺体衛生保全協会(IFSA)の自主基準等が書かれており、説明を受け、同意の上、依頼の自署をします。 大切な人を亡くしたグリーフの状態でこの説明をされたところで説明が頭に入らず、「ぽかん?」となると思いますが、生きている方が手術を受ける際に同意書を書くのと同じ要領です。 エンバーミングでは小切開を伴う外科的な処置をするので、必ず同意が必要となります(同意がないと死体損壊罪が適用されるおそれがありますが、同意に基づいて自主基準に従って行われている限り、正当業務行為とみなされ、エンバーミングに違法性はありませんのでご安心ください)。

依頼書右側には具体的な要望を記入します。 こちらがまさにお手紙パートです!

ドラマや映画で見るご遺体のお顔は眠っているようなイメージかもしれませんが、実際は口や目が開いていたり、長い闘病生活で痩せてしまったり、生前とは違う印象にショックを受けてしまうご家族もいられるいらっしゃるかと思います。 事故や災害などで亡くなられた場合、お顔を見てお別れをすることが難しいような場合もあります。

また、亡くなってすぐのお顔が穏やかでも死後変化などによって、段々と変化してきてしまうのです。なんの説明もないまま依頼書のそれぞれの項目に○をつけたり、個別に要望を書くのは難しいかもしれません。 なので、グリーフにあるご遺族のことを考えると、依頼書の記入はご遺体に起こる変化とエンバーミングでできることの説明がセットでされるべきだと思います。


●お顔の整え

・口閉じ・目閉じ

生きているときと比べていちばんわかりやすいお顔の変化は、口や目が開いてしまうことじゃないかと思います。

エンバーミングでは硬直を解いて、口腔内、鼻腔内を洗浄してから、糸を使って口閉じをさせていただきます。においや体液漏れの対策もします。 また、入歯をつけて口を閉じることも可能です。「亡くなったあとの世界でおいしいものを食べれるように入歯を入れてほしい」というご要望にもできる限りお答えします。

目は、重力でだんだんと眼球が下がってしまい、落ちくぼんでしまいます。 エンバーミングでは、コットンやご遺体用のコンタクトレンズを用いて、自然な状態に整えます。


・やつれた顔をふくよかに

病気や投薬の影響で痩せてしまうこともあります。あまりに生前との差が大きいと頑張らせすぎてしまったと自分を責めてしまうご家族もいらっしゃいます。エンバーミングをしない場合は含み綿でお顔を整えますが、こめかみや目の周り、頬骨の上のあたりなど含み綿では対応できない部分もあります。エンバーミングでは、含み綿、薬品の注入、皮下注射など複数のアプローチで生前の印象に近づけます。

・口ひげ・あごひげ・うぶ毛

亡くなる前はひげのお手入れができなくなる場合もあるし、亡くなってからもひげは伸びます。エンバーミングではひげを剃ってすっきりとしてもらうことができます。もちろん、ひげがチャームポイントだったという方の場合はひげを残して整えることもできます。

女性の場合は、ひげというと抵抗があるかもしれませんが、うぶ毛!年を重ねるとうぶ毛も濃くなったりしますよね?なる方がいらっしゃいます。私もたまに顔剃ります!生体もご遺体も、顔の毛の有無によってお化粧ののりが変わります。


さて、祖父の場合はどうだったかというと、目閉じ・口閉じは「はい」に○をしました。祖父は最後の3か月間は食べたり飲んだりすることができず、点滴で栄養を摂取していましたが、そこまで痩せてはいなかったので、ふくよかにするという項目は「いいえ」に〇をつけました。 しかし、口周りの筋肉が落ちてしまって処置の段階では少し口を閉じにくい状態だったようです。担当のエンバーマーが私に直接電話をくれて、「このまま閉じるとやや不自然な感じになるので少し歯が見えた状態にするか閉じるかどうする?」と聞いてくれました。 家族に意見を聞いたところ圧倒的に「閉じるで!」ということだったので、「少し不自然でもいいので閉じてください、できる限り自然で!」とお願いしました。 自宅に帰ってきた祖父の顔は… 次回以降のお楽しみ!


今回はエンバーミング依頼書の記入、お顔の整えに関する部分のご遺体に起こる変化、エンバーミングでできることについてお話させていただきました。

ポイントとしてはこんな感じです。

・口閉じ・目閉じ

死後に目や口は開いてきてしまいます。穏やかな表情に近づけ、においや体液漏れの対策もします。

・やつれた顔をふくよかに

含み綿に加えてエンバーミングでしかできないアプローチで生前のお姿に近づけます。

口ひげ・あごひげ・うぶ毛

男性も女性も顔に毛はあります!


次回は引き続き、依頼書右側のお手紙パート、お化粧や髪型について説明をしたいと思います。男性でもお化粧するの?伸びた髪を切ってもらえる?どうなるおじいちゃん?!


では、また☺


・おまけ

打ち合わせで依頼書を書く前にやったことがあります。祖父の身体にのっていたドライアイスを外してもぐらいました(エンバーミングをする際のドライアイスの扱いについても次回以降にお話ししますね)。他にも乾燥対策で保湿クリームも塗ってあげればよかった!とか、簡易的に口閉じしとけばよかった!とか、今思えば色々できることはあったのですが、いかんせんグリーフ真っただ中、そこまで頭がまわりませんでした。そんなもん、そんなもん。(グリーフの時は、こんな感じで自分を許していいと思います。)




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